美しい日本建築の発見者

昭和初期に来日したドイツ人建築家のブルーノ・タウトは、日本建築の素晴らしさを世界に紹介しました。

白川郷合掌作りの機能性に感嘆し、桂離宮の美しさを発見したのは自分だと語っていたそうです。数寄屋作りの中にモダニズム建築に通じる近代性があることを評価したとされます。

その一方で、日光東照宮の建物を装飾華美とコケ下ろしたことでも有名です。機能・構造・意匠の統合を建築美と考えたモダニズムの推進者らしい評価です。


シドニーオペラハウスの設計者であるヨルン・ウッツォン(Jorn Utzon)は、日本建築のイメージスケッチを残しています。

それは、基壇の上に浮かぶ大屋根。

梁、束、垂木などを複雑に組み合わせた小屋組に瓦が載る重厚な屋根、それを細い木材の柱だけで支える日本建築をそう表現したのです。外壁は構造的に不要なため、季節や天候に応じて、朝晩には板戸・障子・襖・蔀戸(しとみど)などを開け閉めできる開放性を、空に浮く大屋根とイメージしたようです。


欧州の教会に思いを馳せると、巨大な聖堂空間に如何にして屋根を架けるのかが最大の課題でした。地震大国の日本において、数百年前から培われて来た高い技術力も、欧米人にとっては驚きだったようです。


大屋根を支える軒裏には、日本建築の美しさが凝縮されているように思います。深い庇を支えるためには、垂木と桁、肘木と斗栱などの構造部材が複雑に組み合わさり、とても素晴らしい造形美を作り出しています。


お寺参りの際に、私たちが何気なく見上げたその先に、日本建築の美しさが宿っている。そう考えると、神社仏閣巡りに新しい楽しみが増えたような気がします。

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