大和心を人問はば・・

古事記の研究で知られる、江戸時代の国学者、本居宣長の詠んだ和歌が気に入ってます。


「敷島の大和心を人問はば 朝日に匂う山桜花」


分かりやすく意訳すれば、こうなるようです。


日本人の根底にある美意識は何かと問われれば、

朝日に映える桜を前に、ただ美しい、と感じる心だ。


この和歌が好きなのは、宣長の感性の豊かさと表現の適切さを感じるからです。当代一の知識人が、古来からの日本人の根底にある美意識を和歌に託して理路整然と語る。

かっこいいな〜なんて、無いものねだりの憧れですが。


江戸時代、武家の学ぶ官学は朱子学(儒教)でした。著名人では林羅山や新井白石の名が上がります。

天地に上下の区分があるように、人の身分にも上下が定められている。私利私欲を抑え、常に敬の心にもち、身分秩序に合った生き方を心がける、そう説く朱子学は、幕藩体制を維持するのに好都合だったようです。


本居宣長は、仏教や儒教などの外来思想の影響のがない、古代の人々の心を知ることで、日本固有の精神を明らかにしました。

万葉集などにみえる、素朴でおおらかな精神、人の自然な感情の動きを大切にして、もののあわれ、を文芸の本質として捉えたとされます。


日本文化の本来の良さを知った上で、外国文化に接することが大事、そんな感性を大切にしたいと思います。


ただ、戦前の軍部が、この歌を曲解して国粋主義のプロパガンダに利用したため、敷島、大和、山桜花などの美しい言葉が、軍国主義のイメージを引きずるようになった事は残念でなりません。


大陸から適度に離れ、異民族に蹂躙されることなく独自の美意識を育んできた島国には、豊かな自然と四季の移ろいを愛でる穏やかで勤勉な国民が住まう。

様々な要素が組み合わさって、いまの日本があると思います。


この国に生まれた事、それだけで十分に幸せなのかも知れません。

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