美しい日本
昨年の秋、紅葉狩りに各地の名所を訪ね歩きました。
コロナ禍により外国人の消えた観光地は、かつての静けさを取り戻しましていましたが、心のなかでは、この国の最も美しい季節だよ〜、早く戻っておいで〜、なんて呼び掛けている自分もいました。
美しい日本、この言葉が好きです。これは、外国人へのPRコピーではなく、日本人に向けられた言葉だと思います。私たちの国は美しい、皆それに気づこうよ、と。
美しい四季があり、それに応じた文化があり、それを尊ぶに相応しい所作が、この国の人には備わっている。それらを総称して、美しい、と。
海外への旅先、飲食店やホテルでの接客態度の横柄さに戸惑ったことがあります。彼らの考えはおそらく、サービスを提供する側と受ける側とは対等。でも日本人の意識は違います。そのギャップに戸惑ったのではないかと思います。
東京五輪招致活動での滝川クリステルさんの有名なプレゼンテーション。
お・も・て・な・し
当時、彼女の素敵な仕草だけが印象に残った私には、いまひとつピンときていませんでした。日本人が生まれながらに備えている人をもてなす意識が、欧米人を惹きつける、美しい日本の一つなのだと。日仏混血の彼女だからこそ言えたのかも知れません。
明治の開国以来、美しい日本、を発見した西洋人がたくさんいました。
英国人アーネスト・フェノロサはその代表です。明治前期に政府から招聘された文化人ですが、岡倉天心とともに、法隆寺夢殿の秘仏観音像を開扉したエピソードは有名です。廃仏毀釈をへて西洋崇拝の嵐が吹き荒れるなか、見捨てられていく日本文化を拾い集めて再評価しました。日本美術界の恩人とも言えます。
明治初期に来日した西洋の文化人には、一般庶民の住む住宅を見て、木と紙でできた家屋に美的センスを感じた人がいたそうです。
明るく清潔感があり、障子を通して届く柔らかな光や自然素材を組み合わせた家屋が、美しいと映ったのです。それは、森林資源に恵まれ湿気の多い気候風土にしなやかに対応しているだけでなく、高い道徳心と社会秩序により治安が維持されていることが根底にあると感心しています。
美しい日本、を守り育てて次世代に引き継ぐことも、私たちの大切な仕事のひとつだと思います。
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